夢アグリ
熊本県山鹿市
Profile
農家になって55年。祖父の代から3代目。昭和22年生まれ。高校卒業からずっと農家。
農家になって55年。祖父の代から3代目。昭和22年生まれ。高校卒業からずっと農家。
親からは就職しても良いと言われ、農家を継げと言われないことから反発して逆に農家になったという平本さん。
「昔は苦労したんだよ。
石油もガスもない時代。お風呂も炊飯も木を集めて薪にする。風呂燃やしは子どもの仕事。五右衛門風呂。
水道も中学生ごろに引かれたけど、それまでは水を汲んできてお風呂に。
昔は当然だったけど、今、考えれば大変だった。」
平本さんは、有機JAS栽培のお米や野菜、自家栽培のお米を使った米粉や米ぬかパウダーなどを出品してくれている。
「動物性堆肥は入れないでという要望があって、10年以上肥料は入れていない。収量は落ちる。10のところだったら7しか採れない。収量が落ちるから動物性肥料を入れないのは勇気がいったけど、アレルギーなどの人がいることを聞いて、入れないようにしている。」
有機JAS栽培でも使える肥料があるが、平本さんは動物性肥料だけでなく、肥料は入れていないという。
「入れているのは塩だけ。天然塩。抗酸化塩。」
「塩害は起きないのですか?」驚いてそう質問すると、
60度以上で作った塩は、塩素とナトリウムがくっついたもの。
太陽で乾燥させた塩は分離しやすいので塩害が起きない、とのこと。年間2tの塩を使うそう。
有機生活にも出荷している平本さんの塩、オーストラリアの天然の塩「海の点滴」。
種を蒔く耕すときに塩をまく。10Rの畑に塩を20kgまく。
他にしていることは、冬はれんげを撒いて実がついてからトラクターで耕すこと。
平本さんのお野菜は、塩以外は入れていないので、肥料を使った大きな野菜と並ぶと見劣りしてしまうそう。
だから、無農薬や無肥料を求めているお客様がご来店されるお店に出すようにしている。
「お米は、同じ志の者のグループ4人で5.3ヘクタールの田んぼで作っている。
何度か無農薬で作るのはやめようかとも思った。
実が実るころ虫がきてどんどん稲が枯れていく、もう農薬を撒いてしまおうかとも思った。
でも、何年も無農薬で作ってきた田んぼが元に戻ってしまう。だから、枯れている田んぼを見ながら我慢した。
1人だったら農薬撒いてしまったかもしれない。でも連れ合いがいたから、やめた。
周囲にも無農薬を薦めて、やってみる人もいたけど、みんな1年でやめてしまう。虫にやられてしまうから。」
平本さんは、虫の対策にも塩を使っている。
虫の対策は、満月、新月の虫が羽化する時に、塩水500倍、1000倍塩水を撒いている。
それでもどうしても虫はつく。その場合は手作業。手で取り除いていくという。
「米の値段が下がり、お米を作っている農家さんの中でも、補助金が下りる飼料米を作っている人も多くなった。
無農薬で作っていると、枯れるなどの被害にあった時に農業共済は出ないんだよ。
「農薬かけないでしょ」と言われてしまう。」
被害にあいたくなければ、農薬をかけなさいということ。
農薬や除草剤を使わずにお米やお野菜を作ることは、草刈りなど大変なご苦労があると思う。
被害にあっても共済も出ず、それでも無農薬・無化学肥料でお米、野菜を作り続けるのは、農家さんが私たち消費者の思いに向き合ってくれているから。
「無農薬で作っている人はみんな、信念からそうしてるんじゃないかな。メンツとかそんなものはいらない。」
子どもたちが喜んで食べる人参。
「子どもは「美味しい」とか「不味い」とかは言わず、お美味しいと手が伸びるので、美味しいんだなとわかるんだよ。」
噛むごとに甘味がある人参。平本さんは、大きくなったものから順番に収穫して、ゆっくり育てている。
「スティックセニョールも生で食べるよ。生で食べる機会は少ないと思うけど、採れたての新鮮な野菜は生でも本当に美味しいよ。」
40分かかる山鹿市から車で納品に来てくれる明るくて優しくて楽しい平本ご夫妻。